「斜面傾斜が急、表土層が厚い、土層の強度が低い」
このような箇所では、表層崩壊の危険性が高いとされています。
ここでは、表土層の検査方法について説明します。
表層崩壊は急斜面で発生することが多く、急斜面での現地調査は安全性に配慮して簡便かつ短時間で行えることが望まれています。
〇簡易貫入試験
簡易貫入試験は、表土層深を測定する簡易調査法の一つです。装置が比較的軽量なため、急斜面や狭い場所にも適用できるという利点があります。
「質量5kg(±0.05kg)のドライブハンマーを高さ500mm(±10mm)の高さから自由落下させ、コーンを100mm貫入させるのに要する打撃回数」をNd値と定義しています。
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図-簡易貫入試験器図 |
図-表土層深の推定 |
Nd値は地盤の締まり具合や強度の基準となり、値が大きいほど硬い地盤であるといえます。
砂質系の斜面において、あくまで経験的にではありますが、Nd値=10程度を示す層が表土層と基岩層の境界層となるため、Nd値=10以下の層を表土層と判断しています。
斜面上を縦断方向に複数地点測定することで、斜面内部のNd断面を推定できます。(技術編:事前調査概要【測線の決定】)
〇土層検査棒
土層検査棒による貫入試験は、簡易貫入試験よりも軽量で、より簡便な調査方法です。
比較的やわらかい風化層を対象に表土層深を測定できます。
土層検査棒は、下図に示すようなロッドセットです。ロッドの先端を地中に貫入し、ハンドルを人力で押し込みます。人力で貫入できる限界の貫入深がNd値10以下の深度と一致するとされています。
一般的な貫入試験と比べて簡便に測定することができるため、短時間で多数の地点のデータを取得することができます。
そして、得られた表土層深のデータを地図上に表示すると、平面的な分布を確認できます。平面的な表土層深分布を見ると、表土層が比較的厚い箇所を把握できます。
以上のように、斜面の危険箇所(表土層が厚い箇所)を絞り込むことが可能になり、計測地点の選定に利用できます。(技術編:事前調査概要【深度の決定】)
また、土層検査棒は貫入試験だけでなく、せん断試験(C・Φの算出)も行うことができます。
①貫入試験機の先端をベーンコーンに交換して、同様に測定したい深度まで貫入
②鉛直荷重をかけながら回転させることで、そのときの鉛直荷重とトルク(モーメント)を測定
③荷重を増やして数点測定し、これを経験式からクーロンの式で、C・Φを算出
図-土層検査棒によるせん断試験
※簡易貫入試験と土層検査棒試験の使い分け
・簡易貫入試験ではNd値を測定できます。Nd値をN値に換算することで地盤の強度を評価できます。
・土層検査棒は、より簡便に、やわらかい土層の分布を調べるときに用います。ベーンコーンせん断試験でC・Φも推定できます。