KNOWLEDE

斜面防災の知識

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現行の雨量基準

現在、土砂災害の危険性を評価する指標として降雨情報が用いられています。その際、基準となるのが「時間雨量」や「連続雨量」や「組合せ雨量」といった雨量基準です。

これらの規制基準は、判断材料が降雨量のみであるため、簡便であるというメリットがあります。

では、各雨量基準について順番に説明していきます。

○時間雨量

時間雨量とは、1時間あたりの雨量を指します。
これは降雨強度(mm/h)とも言い換えられます。

時間雨量が大きいときには斜面崩壊の危険性が高まりますが、
弱い雨が長時間降り続いた場合にも大災害に至るケースがあります。
したがって、斜面崩壊の基準としては、総降雨量(累積雨量)を考慮することが望まれています。

そこで、累積雨量をカウントするための指標が「連続雨量」です。

○連続雨量

連続雨量とは、降雨イベントごとの総雨量のことを指します。

降雨イベントというのは・・・「ひとまとまりの降雨」のことです。
この「ひとまとまり」というのは、「前後に一定時間以上の無降雨期間を有する」という意味です。

図-降雨イベントの考え方

※「一定時間の無降雨」も、指標を使用する組織によって
 [6時間]であったり[12時間]であったりと幅があります。

また、ゲリラ豪雨のように、短時間に強い雨が集中的に降った場合も災害の危険性は高まります。

しかし、短時間に時間雨量の大きい雨が降った場合、
連続雨量(累積雨量)としてはそこまで大きい値を示さない可能性もあります。
従って、連続雨量だけを評価基準とする場合も、斜面崩壊を見逃してしまう恐れがあるということです。

このことから、「時間雨量」や「連続雨量」といった単一の指標で崩壊の危険度を計ることは難しいと言えます。

そこで、「時間雨量」と「連続雨量」を一つの指標に集約した「組合せ雨量」が提案されました。


○組み合わせ雨量

これは、縦軸に「時間雨量」、横軸に「連続雨量」を取った降雨履歴のグラフを使って、規制をかける基準の雨量を決定する方法です。

下の図のように
・過去に災害が発生した降雨条件
・規制の厳しさによって変わる確率降雨
を考慮して、規制をかける雨量条件の領域を決定します。

図-組み合わせ雨量の考え方

この基準を用いることで、
時間雨量(降雨強度)が小さくても連続雨量が大きい降雨条件、すなわち
弱い雨が長い時間降り続く時も規制の対象となります。

ここまで説明してきた雨量基準は、判断材料が降雨のみであるため簡便であるというメリットがありますが、土中水分を考慮していないために、危険性の判断精度が低いという課題があります。

↑土中水分が斜面崩壊の危険性を判断するうえで大事な理由については、
斜面崩壊のメカニズムをご覧ください。

そこで、土中水分の変化を考慮した新たな判断基準として土壌雨量指数「IQS」が提案されています。

出典,参考:地盤工学会,豪雨時における斜面崩壊のメカニズムおよび危険度予測