○斜面崩壊の素因
※参考:地盤工学会編集『豪雨時における斜面崩壊のメカニズムおよび危険度予測』第5章 自然斜面における崩壊機構の特徴
斜面崩壊は降雨が誘因となって発生しますが、その斜面の①地質要因、②地形要因、③地盤要因、④植生要因が崩壊の主な素因となっているとされています。
図-斜面崩壊の素因と誘因
参考:地盤工学会,豪雨時における斜面崩壊のメカニズムおよび危険度予測
① 地質要因
表層崩壊は、花崗岩の風化生成物であるまさ土地帯で発生することが多いです。これは花崗岩の風化度が高いことに起因しています。花崗岩だけでなく、深成岩類にはさまざまな粒径の鉱物が混在するため風化しやすくなります。風化しやすいということは、崩壊可動物質の生成速度が速いということになり、崩壊が多くなるということです。
② 地形要因
下記のような地形で斜面崩壊は発生しやすいとされています。
参考:地盤工学会,豪雨時における斜面崩壊のメカニズムおよび危険度予測
これらの条件が重なるほど崩壊の危険性は高くなるといえます.
③ 地盤要因
地盤要因の代表的なパラメーターは、土の粘着力や内部摩擦角です。このほかに土の単位体積重量や透水性なども崩壊の発生に大きく影響します。これらを用いて解析し、崩壊に対する安全率を求めます。
④ 植生要因
崩壊に対する植生の効果として、プラスの面としては表面浸食の防止、根によるせん断抵抗力増大があります。マイナスの面としては、腐食による不安定化、斜面への上載荷重になる、強風による倒木や抜根があります。これらは一般論とされていますが、メカニズムは不明となっています。
○降雨によって斜面崩壊に至るメカニズム
ⅰ)降雨が発生する
降雨により、土層(表土層)の浅部から深部へと雨水が浸透していきます。
ⅱ)雨水は土層に浸透し、境界層上で停滞する
雨水は基本的に鉛直下向に浸透していきますが、透水性の良くない層(基盤層)に到達すると、層境界上に水が溜まってしまいます。
※層境界とは透水性(水の通しやすさ)が異なる層の境界を意味しています。
ⅲ)層境界上に水位が形成される
さらに降雨が続くと水位が発生していきます。これにより間隙水圧が上昇するので、有効応力が低下します。また、体積含水率は再上昇し、それに伴い自重も大きくなっていきます。
ⅳ)間隙水圧の上昇に伴って崩壊に至る
有効応力の低下と自重の増加により、すべり抵抗に対する安全率が低下し、ついに斜面崩壊が発生します。このように、土中水分量の増加が原因で崩壊に至ります。
以上をアニメーションで示します。
土砂災害の種類で記したように表層崩壊は地すべりなどの他の土砂災害と比較して、崩壊が突発的で崩れ落ちるスピードも速いことが特徴です。
そのため、地面が動き出してから行動を起こすようでは間に合いません。
そこで、行動を起こすための基準が降雨量に基づいて決められています。
次項では、現行の雨量基準について詳しく解説します。
ちなみに、後の土壌雨量指数の項で詳しく説明しますが、より正確に崩壊の危険性を予測するには土中の水分に着目することが必要不可欠です!
そこで斜面防災研究グループでは、斜面が変形し始める前の土中の水分量に着目することで崩壊の予兆を検知する研究を進めています。